公式戦デビュー、悔恨の7球
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記<11>
坊ちゃんスタジアムのジャイアンツ戦。デビュー戦で僕の目に映った世界
目を見て、名前を呼ぶ
話題づくりのために四国アイランドリーグにやってきたんじゃないか、そんなふうに見られているのではないか。歓迎されていないのではないか。想像ができないでいた。だからマウンドに上がったとき、どういう目で見られるのか、不安だったのだ。もちろん、それはマウンドの姿で、結果で、僕が真剣であることを伝えるしかない、とも思っていた。
いざ、その運命の瞬間。
「頑張れ、頑張れ、サブロク!」
その声は、僕には何よりも強い力となった。
この日の観衆は1824人。ジャイアンツとの試合ということもあり、昨シーズンの四国アイランドリーグ全体の平均観客動員が700人台、開幕戦が953人ということを考えると、大観衆だった。
いや、実際僕にとっては、数万人の人が入っているような感覚だった。
投球練習を終え、フィールドをに目をやり、守っている選手一人ひとりに声を掛ける。
内野手も、外野手も、全員に対して目を見て名前を呼び、「よろしくね!」と言う。これは僕のモットーで、野球はチーム全員でするものだという気持ちと、コミュニケーションが窮地を救ってくれる、という思いからのことだ。
サードのポロは、「ダイジョウブ! ガンバッテ」と声を掛けてくれた。
ベンチも声を出して僕を後押ししてくれている。
流れを切らない。
そう言い聞かせてキャッチャーのサインをのぞいた。
バッターは6番の北之園隆生選手。
初球はストレートが外角に外れた。力みすぎだ。そう思った。
2球目、ツーシーム。ライトとセカンドの間へふらふらと打球が上がるもファール。うれしかったのは、セカンドの木村聡司選手がダイビングしてでも取ろうとしてくれたことだ。セカンドが捕るにはちょっと不可能に近いところへ飛んだ打球だったけれど、全力でアウトをもぎ取ろうとしてくれるその姿に、また心強い思いがした。
3球目、ツーシームがボール。
4球目、シュートがボール。
5球目、ツーシームでボール。フォアボール……。
思わず天を仰いだ。力が入りすぎていたのを修正できなかった。